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高齢者に忍び寄る
「圧迫骨折」とは?

 脊椎(せきつい)圧迫骨折、または椎体(ついたい)圧迫骨折は、背骨(椎骨)が押しつぶされるように骨折してしまう病態です。

 特に中高年の方や骨粗鬆症を患っている方に多く見られ、日常生活における軽い転倒や、重いものを持った際のわずかな外力でも発生することがあります。時には、はっきりとした原因が思い当たらないまま骨折しているケースも少なくありません。

なぜ起こるのか?主な原因とリスク

 圧迫骨折の最大の要因は、加齢に伴う骨の強度の低下、特に骨粗鬆症です。骨粗鬆症は、骨がもろくなりスカスカになる病気で、日本では推定1300万人もの患者さんがいるとされています。骨強度が低下すると、健康な骨であれば耐えられるはずの軽微な力でも、骨折につながってしまいます。

  • 骨粗鬆症:閉経後の女性に多く見られる他、加齢によって男女ともに骨密度が低下することでリスクが高まります。

  • 性ホルモンの影響:女性ホルモン(エストロゲン)の減少は骨吸収を促進し、骨量を急速に減らします。男性ホルモン(アンドロゲン)も骨の健康に関与しています。

  • 栄養不足:骨を作るために必要なカルシウムや、その吸収を助けるビタミンD、骨の形成に関わるビタミンKなどの不足も原因となります。

  • 特定の疾患:多発性骨髄腫や転移性骨腫瘍など、骨に影響を及ぼす病気も、骨の強度を低下させ骨折のリスクを高めます。

どのような症状があるのか?

 圧迫骨折は、主に以下の症状を引き起こします。

  • 激しい痛み:骨折した椎骨の周り、特に腰や背中に強い痛みが生じ、体を動かすことが難しくなります。

  • 体動困難:痛みのため、立ち上がったり座ったり、寝返りを打つといった動作が困難になります。

  • 身体の変形:痛みがなくても、骨折が原因で背中が丸くなったり(円背)、身長が縮んだりすることがあります。複数の椎骨が骨折すると、この変形はより顕著になります。

  • 好発部位:胸椎から腰椎への移行部(胸椎の10番目から腰椎の2番目あたり)で発生しやすい傾向があります。

  • まれな症状:脊椎の安定性が保たれることが多いですが、まれに脊髄が圧迫されることで、足のしびれや脱力感などの脊髄症状が現れることもあります。

 

 

どのように診断するのか?

 

 診断には主にX線検査が用いられます。

  • X線撮影:背骨の正面と側面からX線写真を撮影し、椎骨の形態変化(圧潰)や骨折の有無を確認します。

  • MRI検査:X線では分かりにくい新鮮な骨折の診断や、骨折が古いものか新しいものかの判別、脊髄への影響の評価に有用です。

  • 骨密度検査:骨粗鬆症が疑われる場合は、DXA法などによる骨密度測定が行われます。

 

 

 

治療法について

 

圧迫骨折の治療は、まず保存療法が選択されることがほとんどです。

保存療法
  • 安静と固定:コルセットなどで骨折部位を固定し、安静を保ちます。これにより痛みを軽減し、骨折の治癒を促します。

  • 薬物療法:痛みを抑えるための鎮痛剤や、骨粗鬆症の治療薬(骨吸収を抑える薬、骨形成を促進する薬など)が用いられます。

手術療法

 保存療法で効果が低い場合や、神経症状が進行する場合などに検討されます。

  • 脊椎固定術:不安定な脊椎を安定させるために行われます。

  • 椎体形成術:骨セメントなどを注入して椎体を安定させる方法ですが、骨粗鬆症性の圧迫骨折には慎重な適応が求められます。

予防と健康寿命の維持

 

 圧迫骨折は、高齢者のADL(日常生活動作)やQOL(生活の質)を著しく低下させ、寝たきりの原因となることもあります。そのため、骨折の予防が非常に重要です。

  • 骨粗鬆症の早期発見と治療:定期的な骨密度検査を受け、骨粗鬆症と診断された場合は適切な治療を継続しましょう。

  • 栄養バランスの取れた食事:カルシウムやビタミンD、ビタミンKを豊富に含む食品を積極的に摂りましょう。

  • 適度な運動:ウォーキングなど、骨に適度な負荷をかける運動や、筋力を維持・向上させる運動で転倒を防ぎましょう。

  • 転倒予防:自宅内の段差をなくす、手すりを設置する、滑りにくい履物を着用するなど、転倒しにくい環境を整えることが大切です。

 圧迫骨折は予防可能な側面が多く、もし発生してしまっても適切な治療とリハビリテーションによって、元の生活を取り戻すことを目指すことができます。

R-accion.代表の小宮から

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 年齢を重ねていくと、背中や腰に痛みを感じることが増えるかもしれません。しかし、急に背中や腰に強い痛みが出たり、体を動かすと痛みが強くなる場合は、脊椎圧迫骨折の可能性があります。我慢せずに、すぐに整形外科を受診してください。早期発見が、回復を早める第一歩です。

 骨折が診断されたら、医師や理学療法士の指示に従い、コルセットを正しく装着することが非常に重要です。これにより、痛みを和らげ、骨折部位の安定化を促し、治癒を助けます。

 また痛みのきっかけは脊椎圧迫骨折かもしれませんが、持続する痛みは筋肉の凝りによる場合も少なくありません。その場合は理学療法士が適切にケアすることで痛みを取り除くことができます。また予防としてお腹のチカラ(腹圧)を高めていくことも重要です。

 

 日常的に予防するためにも、カラオケへ行って大声を出してみたり、友達と会って筋肉痛になるほど大笑いしてください!腹圧トレーニングはそれで十分!!行ってらっしゃい!!

 

小宮良太

【参考にした情報源】

岡庭豊:病気が見える vol.11 運動器・整形外科.第1版.株式会社メディックメディア.2021

森諭史,他:脊椎圧迫骨折,老人骨折に対するリハ・ケア,第37回日本リハビリテーション医学会学術集会.585-586.2000

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