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パーキンソン病における振戦(震え):症状の特徴と病態、治療
1. 振戦の分類とパーキンソン病における「安静時振戦」
振戦は、その出現する状況によっていくつかのタイプに分類されます。特に重要なのは、以下の3つの分類です.
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安静時振戦(Resting Tremor):
罹患している手足などが安静にしているときに現れ、動作を起こすと軽減または消失するタイプの振戦です。パーキンソン病で最も一般的に見られる振戦であり、診断上の重要な特徴となります。周期は4〜6Hz(1秒間に4〜6回)と規則的で、振幅(震えの大きさ)は様々です。特に手指の震えが顕著になります。この振戦はしばしば体の片側から始まり、病気の進行に伴い両側へ広がることがあります。
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姿勢振戦(Postural Tremor):
ある姿勢を保とうとするとき(例:腕を前に伸ばしたままにする)に現れる振戦です。本態性振戦の代表的な症状ですが、パーキンソン病でも姿勢振戦が観察されることがあります。しかし、その場合でも安静時にも振戦が見られることが多く、純粋な姿勢振戦であることは少ないとされています。
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企図振戦(Intention Tremor):
ある目的のために動作を起こすときに現れ、目標に近づくにつれて震えが強くなり、目標に到達すると最も激しくなるタイプの振戦です。小脳の障害でよく見られる症状であり、手が目標物を通り過ぎてしまうような不正確な動きが伴うこともあります。
パーキンソン病の患者さんでは、特に安静時振戦が特徴的ですが、病気の進行に伴い、姿勢時振戦を合併することもあります。
2. 振戦の病態(メカニズム)
振戦の発生には、脳の奥深くにある「小脳歯状核―赤核―視床」を結ぶ神経経路のどこかに異常が生じることが関与していると考えられています。特に、**視床の腹側中間核(Vim核)**が振戦のリズム発生に深く関わっていることが分かっており、この部位を外科的に破壊する定位脳手術(Vim核破壊術)によって振戦が消失することがあります。
パーキンソン病における振戦は、神経変性疾患の一つであり、ドーパミン産生が低下することで神経伝達が阻害されることが主な原因です。パーキンソン病の安静時振戦では、小脳の過剰な興奮が示唆される所見も得られており、ドパミン不足だけでなく、脳内の複数の神経回路のバランスが崩れることで振戦が生じると考えられています。
3. パーキンソン病における振戦の治療
振戦の治療は、その原因疾患に応じた対症療法が基本となります。パーキンソン病の安静時振戦に対する薬物治療では、主に以下の薬剤が用いられます。
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L-DOPA製剤:
パーキンソン病の治療において最も効果的な薬剤の一つで、脳内でドパミンに変換され、不足したドパミンを補います。振戦に対しても有効性が高いとされています。
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ドパミン受容体作動薬(DA作動薬):
脳内のドパミン受容体を直接刺激することで、ドパミンの働きを補います。L-DOPA製剤と同様に、振戦に対して効果が期待できます。
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抗コリン薬:
以前は振戦に対して広く用いられましたが、L-DOPA製剤の方がより有効という研究報告もあり、現在ではL-DOPA製剤やドパミン受容体作動薬で振戦がコントロールできない場合に検討されることがあります。特に、比較的若年で安静時振戦が主な症状である病初期の患者さんに考慮されることがあります。薬物療法は副作用や長期使用による影響にも注意が必要です。
外科的治療:
薬物療法で振戦のコントロールが不十分な場合や、日常生活に大きな支障をきたす安静時振戦が主な症状である患者さんには、**定位脳手術(Vim視床破壊術)**が検討されることがあります。また、薬物療法で効果が得られない場合には、**深部脳刺激療法(DBS: Deep Brain Stimulation)**のような外科的治療も有効とされています。この手術は、脳のVim核の一部を意図的に破壊することで、振戦を軽減または消失させることを目的とします。
振戦はパーキンソン病の代表的な症状ですが、患者さんの日常生活機能に最も影響を与えるのは、無動(動きの遅さ)症状であるとされています。そのため、振戦が多少残っていても、無動症状の改善を優先して治療方針が決定されることもあります。
パーキンソン病の振戦の治療は、他のパーキンソン病の症状と同様に、個々の患者さんの症状や生活状況に合わせて、医師が最適な薬剤選択や治療方針を決定することが重要です。
R-accion.代表の小宮から
手が震える、という症状は誰にとっても不安なものです。特に、パーキンソン病の「安静時振戦」は、じっとしている時に現れ、動かすと軽減するという特徴があります。この特性を理解することで、不必要な不安を軽減し、ご自身の症状と向き合う第一歩になります。L-DOPA製剤などの薬は、振戦を含むパーキンソン病の症状を大きく改善します。薬が最も効果を発揮している「オン」の時間帯に、積極的にリハビリに取り組むことで、より効果的な機能改善が期待できます。薬剤の効果とリハビリのタイミングについて、医療チームと相談しましょう。
パーキンソン病の**「振戦(震え)」**は、患者さんの心身に大きな影響を与える症状です。特に安静時振戦は、ご本人の精神的負担や社会生活での不便さに直結することもあります。しかし、薬物療法や必要に応じた外科的治療によって、この震えはコントロールできる可能性が高いです。そして私たち理学療法士は、その治療効果を最大限に引き出し、より質の高い生活を送るためのサポートをします。

【参考にした情報源】
岡庭豊:病気がみえる vol.7 脳・神経.第2版.株式会社メディックメディア.2021
近藤ら:不随意運動:診断と治療の進歩 Ⅱ.主な不随意運動の病態と治療 2.振戦.日本内科学会雑誌.第89巻.第4号.25-29.2000
