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手首の骨折「橈骨遠位端骨折」を理解する

 橈骨遠位端骨折は、腕の2本の骨のうち、親指側にある「橈骨」の手首に近い部分(遠位端)で起こる骨折です。特に転倒して手をついた際に発生しやすく、高齢者、特に骨粗鬆症の女性に非常に多く見られます。日常生活に大きな影響を与えるため、適切な治療とリハビリテーションが重要です。

1. 橈骨遠位端骨折とは?

 橈骨遠位端骨折は、前腕の親指側の骨(橈骨)の手首に近い部分で起こる骨折です。 転んで手をついた際に発生することが多く、特に高齢者、中でも骨粗鬆症の女性に多く見られます。

  • 代表的なタイプ:

    • コーレス骨折: 手のひらをついて手首が反り返った際に、骨折した骨片が手の甲側にずれるタイプ(最も多い)。

    • スミス骨折: 手の甲をついて手首が掌側に曲がった際に、骨折した骨片が手のひら側にずれるタイプ。

2. 受傷しやすい方・原因・症状

  • 好発:

  骨が脆くなった高齢者、特に閉経後の女性に多く見られます。若年者でもスポーツや交通事故で起こります。

  • 主な原因:

  屋内外での転倒により、手をつくこと。骨粗鬆症がある場合は、より軽微な力で骨折します。

  • 症状:

    • 手首の強い痛み、腫れ、皮下出血

    • 手首の変形(「フォーク状変形」が見られることも)

    • 手首や指が動かしにくい

    • 指のしびれ(神経が圧迫される場合)

3. 診断

 問診と手首の診察に加え、以下の画像検査を行います。

  • X線(レントゲン)検査: 骨折の有無やずれの確認。

  • CT検査: 複雑な骨折や関節面の状態を詳しく評価する場合。

  • MRI検査: 靭帯や軟部組織の損傷を確認する場合。

4. 治療の選択肢

 骨折のタイプ、ずれの程度、年齢などを考慮し、最適な治療法を提案します。

  • 保存療法(手術をしない治療):

    • 対象: 骨折のずれが少ない場合や、手で整復して安定が保てる場合。

    • 方法: ギプスやシーネで4~6週間固定。定期的にX線で骨のずれがないか確認します。

    • 重要: 固定中も指や肩の運動を行い、関節が硬くなるのを防ぎます。

  • 手術療法:

    • 対象: ずれが大きい骨折、手で整復しても安定しない場合、関節内の骨折や粉砕骨折。

    • 方法:

      • 経皮的鋼線固定術: 細い金属のピンで骨を固定(比較的低侵襲)。

      • プレート固定術: 金属製のプレートとねじで骨折を強固に固定。近年は手のひら側から固定する「掌側ロッキングプレート」が主流。

      • 創外固定術: 体外のフレームで骨を固定(重度の粉砕骨折などに)。

    • メリット: 骨折を安定させ、早期からリハビリができるため、機能回復がスムーズになります。

5. リハビリテーション

 治療方法にかかわらず、機能回復にはリハビリが不可欠です。

  • 急性期: 痛みや腫れを抑えつつ、患部以外の指や肩の動きを維持します。

  • 回復期: 固定除去後や手術後、手首の曲げ伸ばし、筋力強化、バランス訓練などを専門家の指導のもと行います。

  • 目標: 段階的に日常生活での手の使用を増やし、元の活動レベルへの復帰を目指します。

6. 予防

 特に高齢者の方にとっては、転倒予防と骨粗鬆症の管理が最も重要です。

  • 転倒予防:

    • 家の中の段差解消、手すりの設置、滑りにくい靴の使用。

    • ウォーキングや体操などでバランス能力や足の筋力を鍛える。

  • 骨粗鬆症の予防と治療:

    • カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを多く含む食事。

    • 適度な日光浴と運動習慣。

    • 必要に応じた薬物治療。

 橈骨遠位端骨折は、適切な治療とリハビリテーションにより良好な機能回復が期待できます。しかし、骨折をしないための予防策が最も重要です。ご自身の骨の健康状態に関心を持ち、日頃から予防に努めることが大切です。

R-accion.代表の小宮から

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 転んで手をついた後、手首に強い痛みや腫れ、変形がある場合は、すぐに整形外科を受診してください。たとえ、わずかなヒビだとしても、適切な治療と管理がその後の機能回復に大きく影響します。自己判断せず、専門家の診断を受けましょう。

 近年、手首の骨折は手術で強固に固定できるようになり、早期からリハビリを開始できることが多くなりました。痛みがある中で動かすのは辛いかもしれませんが、専門家の指導のもと、少しずつでも積極的に体を動かすことが、手首の機能回復には不可欠です。

小宮良太

【参考にした情報源】

岡庭豊:病気が見える vol.11 運動器・整形外科.第1版.株式会社メディックメディア.2021

内田淳正:標準整形外科学.第11版.株式会社医学書院.2012

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