その原因と主な症状
パーキンソン病は、脳の神経細胞の変性により、体の動きに様々な障害が現れる進行性の疾患です。特定疾患(難病)に指定されています。
パーキンソン病の原因
ドーパミン不足が鍵
パーキンソン病の直接的な原因は、脳の中脳にある「黒質(こくしつ)」という部位のドーパミン神経細胞が減少・変性することにあります。黒質で作られるドーパミンは、脳が体をスムーズに動かすための指令を出す上で極めて重要な神経伝達物質です。このドーパミンが不足すると、脳から筋肉への運動指令がうまく伝わらなくなり、パーキンソン病特有の症状が引き起こされます。
なぜ黒質のドーパミン神経細胞が変性・減少するのかは完全には解明されていませんが、以下の要因が関与していると考えられています。
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α-シヌクレインの異常な蓄積(レビー小体)
パーキンソン病患者さんの脳には、神経細胞内に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質の塊が多く見られます。このレビー小体の主成分である「α-シヌクレイン」が異常に蓄積することが、神経細胞の変性・死滅につながると考えられています。
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遺伝的要因
ごく一部のケースでは特定の遺伝子変異が関連しているとされますが、ほとんどは遺伝とは直接関係ありません。
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環境要因・酸化ストレスなど
特定の環境因子や細胞レベルでの酸化ストレス、炎症なども神経変性を促進する可能性が指摘されています。
パーキンソン病の主な症状
運動症状と非運動症状
パーキンソン病の症状は、体を動かすことに関わる「運動症状」と、それ以外の「非運動症状」に分けられます。
運動症状(パーキンソン病の四大症状)
ドーパミン不足により、特に以下の4つの特徴的な症状が現れます。
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安静時振戦(しんせん):手足の震え
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何もしていない時(安静時)に、手足、特に指先に規則的な震えが現れます。これは「丸薬を丸めるような震え(pill-rolling tremor)」と表現されることがあります。
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固縮(こしゅく):体のこわばり
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筋肉が硬くなり、関節を曲げ伸ばしする際に抵抗を感じます。関節をゆっくり動かすとカクカクとした抵抗(「歯車現象」)や、均一な抵抗(「鉛管現象」)として感じられます。
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無動(むどう)/動作緩慢(どうさかんまん):動きが遅くなる、少なくなる
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動作の開始や継続が困難になり、全体的に動きがゆっくりと少なくなります。
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仮面様顔貌(かめんようがんぼう): 表情筋の動きが少なくなり、表情が乏しくなります。
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小声症: 声が小さくなり、一本調子になります。
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小刻み歩行: 歩幅が狭く、すり足で歩くようになります。
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すくみ足: 歩き始めや方向転換時に足が前に出にくくなります。
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小字症: 字がだんだん小さくなります。
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姿勢反射障害(しせいはんしゃしょうがい):バランスがとりにくい
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体のバランスを保つ働きが低下し、転倒しやすくなります。この症状は病気の進行とともに現れることが多いです。
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非運動症状
運動症状が現れる数年前から兆候が見られることもあり、生活の質に大きく影響します。
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嗅覚障害: 匂いを感じにくくなります。
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便秘: 消化管の動きが悪くなり、便秘になることが多いです。
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睡眠障害: 不眠、日中の眠気、夢の内容に合わせて体を動かしてしまう「レム睡眠行動障害」などが見られます。
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精神症状: うつ状態、不安、意欲の低下、幻覚・妄想などが現れることがあります。
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自律神経症状: 起立性低血圧(立ちくらみ)、発汗異常、排尿障害などがあります。
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痛みやしびれ: 原因不明の痛みやしびれを感じることがあります。
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認知機能障害: 病気が進行すると、記憶力や判断力の低下が見られることもあります。
R-accion.代表の小宮から
パーキンソン病の症状は人それぞれです。まず、ご自身の運動症状と非運動症状を把握し、何が困るのかを明確にしましょう。「今日はここまで歩く」「この動きをやってみる」など、日々の具体的な目標を設定し、積極的に体を動かす習慣を作ることが大切です。
また、医師から処方される薬は、ドーパミン不足を補い症状を緩和します。薬が効いている「オン」の時間帯を意識して、リハビリや活動に取り組む工夫をしましょう。
どのような運動やストレッチが必要なのか?カラダのどこかが動きにくくなっているのか?などお気軽にご相談ください。

【参考にした情報源】
岡庭豊:病気がみえる vol.7 脳・神経.第2版.株式会社メディックメディア.2021
