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つくられた痙縮

更新日:2023年12月19日

参考にした書籍

研修資料:「回復期脳血管障害患者の理学療法ガイド2023年7月8日」

高次脳機能がよくわかる脳のしくみとそのみかた,植村研一,医学書院,2017.

_____________________


ズバリいうと、「つくられた痙縮」がある


と私は考えている


ズバリ言います


病院に勤めていた頃


脳梗塞や脳出血を発症して間もない方でも


弛緩性の麻痺の方がいたり、


すでに手や脚の緊張が高い痙性麻痺(痙縮が強く生じている状態)の方がいた


私は先輩から、


緊張の低い弛緩性麻痺の方は筋肉の緊張を上げるように、


緊張の高い痙性麻痺の方は筋肉の緊張を下げるように、


教わった



しかし、


臨床経験を積むほどにこの点にとても疑問を抱くようになる


疑問に思うことがある


それはなぜかというと、



弛緩性麻痺の方が、


徐々に筋肉の緊張が高まり、


あるときには痙性麻痺の状態になっていくからだ


では身体の動きは良くなったか?


いや、動くようになったとは言い難い


随意性(自分が思ったように身体を動かすこと)が向上したか?


少しだけあがった、、かもしれない



つまり、


上げろと言われていた筋肉の緊張が高まっても身体は思うような回復をみせない


そして、セラピストは次に高まった筋肉の緊張を下げようと試みていく


挙げ句の果てに


「緊張が上がってきたので歩く練習を控えましょう」


なんていうセラピストすらいる


なぜか?


緊張が上がってきたらなんで歩く練習を控えるのか


緊張が高まるからだ


「急に力を入れないでください」


緊張が高まるからだ


「無理に起きないでください」


緊張が高まるからだ 


緊張が高まる要因を改善するのではなく、


緊張を高まらないように動きを制限する方法をとる訳だ



麻痺によって動かなくなってしまった身体を動かすために、


これまで動かす練習をしてきたのに、


今度は途端に、「動かすな」


えっ、、、、、、

リハビリで動かすべきでしょ


さらに疑問が浮かぶ



筋肉の緊張を調整することが本当に脳の障害を受けた方の身体の動きを向上させるのだろうか?


先輩から教わった


低緊張(弛緩性麻痺)は緊張を高める


高緊張(痙性麻痺)は緊張を緩める


これは本当に正しいのか?



私たちの身体は筋肉が働き、関節が動くことで一連の動きを作り、生活動作を遂行している


そのため、筋肉には一定の緊張が必要だ


筋肉の緊張は動きの準備状態と言って良い


脳や脊髄からの指令が筋肉に届くとき、


筋肉の緊張が高いとすぐに筋肉が働くことができる


筋肉の緊張が高いということはすぐにスイッチがONになりやすい状態である


だからスポーツ前や試合、大会前には適切な筋肉の緊張になるように入念にウォーミングアップをしている


なぜ試合前にウォーミングアップをするのか


逆に筋肉の緊張が低いと動きが遅れたり、思うように動かないことがある


凝りをほぐし柔らかい筋肉を手に入れたいマッサージ屋による仕業


「揉み返し」だ


もちろん他にも例はあるが、馴染みやすいのはこれだろう


私は肩の筋肉にキシロカインという筋弛緩剤を局所的に注射で打ったことがあるが


車の運転でハンドルを持っていられないほど腕が重くなってしまう


筋弛緩剤は大げさだが、


マッサージによって筋肉を休眠状態にさせてしまい


だるい、重い、場合によっては痛いという症状を引き起こさせてしまう


肩が重くて憂鬱だ


だから、筋肉の緊張は大切だ


それはわかるよ、先輩



障害の部位の違いによる弛緩と痙性


脳の障害された部位により麻痺のタイプの違いは生じるのか?


脳の運動前野(4野)の障害では、弛緩性麻痺の症状が現れ、


脳の補足運動野(6野)の病変があると、痙性麻痺の症状が現れる



これを私なりに推論してみようと思う

※ここからは大いなる私見を含む


PTによる推論の展開


運動前野


障害を受けると弛緩性麻痺になるとされる運動前野


脳の運動前野(4野)の役割は本来何か?


この4野は、新しい刺激による運動プログラムの生成に関わっているとされている


この新しい刺激とは外界の刺激が関与しているとされている(外界誘導性運動)


例えば、急に出てきた歩行者を避けるために運動のプログラムを生成し、実行部隊に司令する役割だ


飛んできたボールをキャッチするなど



周囲の環境が変化し新たな刺激となった際に


自らの運動プログラムを書き換え、生成するのに働く場所である


ここが障害されると弛緩性麻痺となるらしい


私が考えるに、


自らの周囲環境の新しい刺激に反応するために


この4野が筋肉の緊張を高めるようなプログラム生成に関わっているために


4野の障害で筋肉の緊張を高めることができずに


新たな刺激に反応できない弛緩性麻痺となってしまうと考える

(※要注意:医学的な根拠はない、解剖生理学から考察しています)



補足運動野


障害を受けると痙性麻痺になるとされる補足運動野


脳の補足運動野(6野)の本来の役割は何か?


この6野は、記憶誘導性の運動プログラムの生成に関与しているとされている


つまり、これまで培ってきた動き方を思い出しプログラム生成するところだ(記憶誘導性運動)


例えば、不安定な場所での歩き方(歩き方そのものもそうである)


自転車の乗り方など


この6野が障害されると痙性麻痺となるという


この6野の働きが障害される代表的な疾患が「パーキンソン病」だ


パーキンソン病の症状の一つである、


すくみ足だ


これは、歩き始めるための一歩が出ずに転んでしまったりする


もちろん本人は歩き出したい


だけどなぜが足が出ずに転んでしまう


そこで運動前野(4野)を刺激するように、


目の前にラインを引いて跨ぐように足を出したり、


リズムに合わせて足を運ぼうとすると


急に一歩が出やすくなることがある


つまり記憶誘導性の運動プログラム生成から、


外界誘導性の運動プログラム生成に歩き出すためのシステム処理を変える作業をすると、


すくみ足が軽減する



でも6野の障害により記憶誘導性、これまで獲得してきた運動プログラムの再現ができなくなることで痙縮、筋肉の緊張が高まるという点は腑に落ちない



ここで私が経験したSさんという女性の片麻痺の方を紹介しようと思う



つくられた痙縮


Sさんとの出会いは、ラクシオン.の営業を始めて少し経ったころ


発症から2年ほどが経過した脳出血による右麻痺の方である


ホームページをみてお問い合わせをいただきトレーニングが開始された


右の膝を伸ばそうとすると、


ひどく足首の内反が生じてしまう


歩くために右脚を振り出そうとすると、


ひどく足首の内反が生じてしまう


椅子から立ちあがろうとすると、


ひどく足首の内反が生じてしまう



私はこの方とトレーニングをした


▼右膝を伸ばすトレーニング


▼右股関節を曲げて脚を持ち上げるトレーニング


▼立ち上がるための踏ん張りを効かせるトレーニング


足部に対してこれといってトレーニングを行ったことはない


上記のトレーニングは即効性がある


適切な回数や準備を行うことで、


右膝を伸ばしても、


脚を振り出しても、


立ち上がっても、


足部の内反症状はおさまっていく


内反が治るポイント


どうして内反がおさまったのか?

(※私の臨床推論であり、仮説の域を出ません)



膝を動かすためには、膝の筋肉が


股関節を動かすためには、股関節周りの筋肉が


立ち上がるためには脚全体の踏ん張る力が


必要なんです


それをトレーニングして動きやすい状態にすると


内反が減るんです


つまり内反はうまく動かない膝や股関節、脚全体の動きのサポートをしようとわざわざ足部に力を入れているのかも知れません



動かせるところに力を込めて動かす、それが内反なのかもしれません


分離運動ができない、共同運動なのかもしれません


ある意味、人の順応とも言えるのかも??

※この順応によって痙縮はつくられるのかもしれません



内反や痙縮といった目でみてわかりやすい症状にどうしても注意が向きやすいことは事実です


しかし、その症状がどうして生じているのか?


どこの運動が足りていないのか?


どこの筋肉のパワーが足りていないのか?


そこまで評価し、トレーニングが提供できれば



「緊張が上がってきたので歩く練習を控えましょう」



なんていうセリフは出てこないはず


あなたのリハビリは目の前に見える症状に対しての対処療法になっていませんか??


あなたの痙縮は


「つくられた痙縮」ではありませんか?



つくられた痙縮


医学論文や文献、書籍、体験録などを参考に【専門情報】をお届けいたします


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  片麻痺専門トレーニングジム R-accion.

代表 小宮 良太



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